相続税還付
(1)相続税の還付
相続税の還付手続きとは、相続税申告期限(亡くなった日から10ヵ月後)から5年以内に、払い過ぎていた相続税の返還を求める手続きです。
税務署は相続税の過大な申告がわかっていても、「あなたは払いすぎていますから、お返しします」などとは言ってくれません。また、相続税申告の経験が少ない税理士の誤った判断により、過大な相続税を払ってしまっているというケースもあるのです。
相続税の還付を受ける可能性があるのはどのようなときかを説明いたします。
(2)なぜ相続税の還付が受けられるのか
相続税の申告というと、税理士に依頼するケースが多いと思います。
税理士はプロなのだから、納税者のために正しく申告していると思われがちですが、実は税理士が不慣れで、割高な相続税を納めているということは多々あります。
また税理士といっても、人によって様々な税法ごとの専門知識を持っています。
例えばお医者さんであれば、外科・内科・眼科等の専門があるように、税理士にも専門分野があります。日本の税理士の大半は法人税や所得税を専門にする方が多く、相続について専門知識を有する税理士はまだ少数派かもしれません。
申告経験の少ない税理士に仕事を依頼するということは、手術経験の少ない医者に手術を依頼するようなもので、以前からの付き合いの関係でやむを得ない場合もあると思いますが、納税者からするとあまり良い選択とは言えません
(3)還付を受けられる要因とは
還付が認められる理由の多くは、土地の評価によるものです。
土地の評価については、その土地の形状や周囲の状況等の様々な要因を総合的に考慮して、評価額を決定していきます。
しかし実際は、不動産の評価は10人が評価すれば10通りあるとも言われていますが、特に土地についてはその形状や状況は様々であり、評価が他と全く同じということはほとんどありません。
おそらく税務署側も判断に迷うようなケースも多いと思いますが、専門と言われる税理士は、様々な法令や通達、過去の事例や判例を調べて減額要素を探します。
しかし土地の評価については、あまりに解釈を広げて行き過ぎた減額評価を行うと、申告後に税務署から否認される可能性も出てきます。
もし否認された場合は過少申告加算税等が発生し、かえって納税者に迷惑をかけるため、税理士によっては絶対に税務署に否認されないように、安全確実な方法であまり評価を下げずに申告しているケースがあります。
税理士としては決して消極的なわけではなく、遺産分割などで争い事が起こりやすい相続を一度で確実に決着をつけようという意識の表れだと思いますが、納税額だけ見れば結果として高い相続税を納めていることになります。
このような状況から、申告後に他の税理士が申告内容を見たところ、相続税を減額できる要素が見つかり、還付手続きによって税金が事後的に還付される、ということがあるのです。
なお、すでに税務署の税務調査が終わっているような場合はどうでしょうか。
税務調査は追徴課税を狙ってくるため、納税者が有利になるような減額要素は、税務調査ではほとんど教えてもらえません。
逆に言うと、すでに税務調査が終っているということはこれ以上増額になることはないと言えますので、還付を受けやすいとも言えます。
(4)実際に還付を検討する際の注意点
相続税の還付を検討する際に難しいのは、他の相続人との協力関係かもしれません。
相続税は各相続人がそれぞれ納めているものであり、還付請求をする場合は各々が請求をする事になりますので、実際には自分一人でも請求することは可能です。
よって、仮に他の相続人に協力を得られなくても問題ないのですが、理想的には相続人全員で手続きをするのが望ましいでしょう。
依頼は慎重に検討
またさらに難しいのは、どの税理士に検討を依頼するかという点です。
当初申告した税理士に依頼するのは、申告内容を疑っているようで難しいと思いますが、かといって他の税理士に依頼するのも気が引けるかもしれません。
相続税還付の手続きでは、更正の請求書という書類を税務署に提出します。
その際に「税務代理権限証書」という委任状を添付しますが、これによりその後の税務署からの通知は当初の税理士ではなく、新たに「税務代理権限証書」を添付した税理士に連絡がきます。
よって、最初の申告をお願いした税理士とは以前からの付き合いがあるために還付請求することを知られたくない、という場合であっても、相続人の方が自分から言わない限り、当初の税理士に知られることは通常はありません。